私が太り始めた小学生の頃、母も、「痩せたい」といつも言っていた。
ある日、学校から帰ってくるとテーブルの上に「こんなに痩せていいかしら」という、魅力たっぷりのタイトルの本が置いてあった。
母に聞くと、「すごく簡単に痩せられるんだと!!」と、ニコニコしながら言っていた。
私が本を開くまでもなく、母が内容をペラペラと喋り始めた。
要約すると、「骨盤が開くと太りやすくなるんだってさ。だからこうやってつま先を内側に向けてトンって落とせば良いんだと・・・」ということだった。それを毎日やれば、骨盤がもとの位置に収まり、痩せるということらしい。
「そんなんで痩せたら良いねぇ。簡単だし疲れないし・・・」と言いながら、二人で毎日続けた。
ほんと、そんなんで痩せたら良いよね!!って感じ。いや!そんなんで痩せられたら、ダイエット業界は崩壊だ。
私は、最後までその本を読むことなく、母の話を信じていたが、本当にそれだけで痩せられると書いてあったのかも実は疑問だ・・・。
今考えると、母は、誰かにその本に書いてある内容(骨盤体操をやれば簡単に痩せられること)を聞き、その本を買ったのではないか?ありえる!!
だから、色々と書いてあることはまったく読まずに、その簡単な「骨盤体操」のところだけを読み、やり方の写真を見ただけではないか?
母という人間は、友人から「これいいよ」と言われると、すぐに買ったり試したりする。
そして、おおむね「だめだったね」で終わる。
そして、そんなふうに他人から聞きかじったことに、私を巻き込むのだ。
宜保愛子や丹波哲郎の本もそうだった。母は、「この本を読めば、あの世のことは全部わかるんだと!」と言って、私を巻き込んで読ませようとした。まだ子供だった私は、霊界のことにはまったく興味がなく、読むことはなかったが・・・。
さすがの母も、すぐに霊界には飽き、丹波哲郎や宜保愛子の本達も「こんなに痩せていいかしら」と一緒に、やがてどこかに消えてしまった。